【特集】「もちまる日記」に再燃する“動物虐待”疑惑──収益優先の動画作りが引き起こした炎上の歴史
215万人以上のチャンネル登録者を抱える大人気YouTubeチャンネル「もちまる日記」。スコティッシュフォールドの“もちまる”と、飼い主である「下僕」との日常を描いたこのチャンネルは、かつて「世界で最も視聴された猫」としてギネス世界記録にも登録され、一時は「日本一有名な猫」とまで称された。
だが、その裏で、もちまるの健康管理や演出手法に対して、たびたび「動物虐待ではないか」との批判が噴出してきた。そして2025年、もちまるの深刻な体調不良とチャンネル活動の休止発表を機に、その疑念は再び強まっている。
■ 2021年〜2024年:炎上の連続と“演出過多”な動画作り
もちまる日記が初めて大きく炎上したのは2021年のことだった。視聴者の反応は、「可愛い」を通り越して「不快」や「心配」に変わっていった。
- 【ヒヨコとの対面】(2021)
預かったヒヨコをもちまるに近づける演出が「命の危険がある」とSNSで拡散。視聴者や動物愛護団体から批判が集まり、動画は削除された。 - 【新幹線でのキャリー外出】(2021)
新幹線内でキャリーバッグからもちまるを取り出し膝の上に乗せる動画が「公共マナー違反」「猫にストレスを与えている」として炎上。飼い主は「車掌の許可を得た」と説明したが、JRの対応とは食い違っていた。 - 【“かりんとう”トイレ動画】(2021)
猫の排泄物を模したかりんとうを猫トイレに置くという演出が「不衛生」「食べ物を粗末にしている」と非難され、動画は削除と謝罪に追い込まれた。 - 【病中の外出・演出】(2022)
もちまるが腎結石を患っているにもかかわらず、長距離の新幹線移動や観覧車に乗せる企画を継続。「ストレスのかかる外出は虐待ではないか」との声があがる。 - 【閉じ込め疑惑】(2023)
「棚に閉じ込められてしまった」もちまるを救出する動画が公開されたが、「閉まるはずのない棚」「演出っぽい行動」などが指摘され、「やらせ」「虐待まがい」と炎上。 - 【高級ホテルでの粗相】(2023)
高級ホテルのベッドの上で、もちまるが粗相をしてしまう様子を撮影し、そのまま動画に公開。「体調不良の兆候を面白コンテンツにした」として批判を浴びた。 - 【炭酸水を与える演出】(2024)
腎臓病持ちであることが判明しているにもかかわらず、もちまるに炭酸水を飲ませる様子をスローモーションで撮影。「腎臓に大きな負担をかける可能性がある」「虐待と変わらない」と大炎上。
■ 2025年:体調急変、そして活動休止へ
2025年4月20日、もちまる日記のチャンネルに投稿された動画で、飼い主は「もち様の体調が悪化したため、しばらく活動を休止する」と発表した。
この動画では、数日前の夜中にもちまるが5回の嘔吐を繰り返し、急きょ病院に搬送されたことが報告された。点滴と制吐剤の処置により一時的に体重と食欲は戻ったものの、精密検査は体力的な理由から見送られたままだ。
飼い主は、「今後、腎臓病の悪化や尿管閉塞の可能性もある」「急変すれば緊急手術もあり得る」と説明しつつ、「回復を待ってから再診する」として、現時点では通院による経過観察を続ける方針を示している。
また、動画の中では、「今はリビングで落ち着いています」とくつろぐもちまるの映像が挿入されていたが、視聴者からは「病猫を“元気そうに見せて”安心させようとしている」「症状の重さと演出の温度差が怖い」といった不信の声も多く寄せられている。
■ “人気”の裏にある構造的な問題
もちまる日記の動画は、数分〜10分程度のテンポの良い編集と“癒し”を全面に押し出した構成で、日常系YouTubeとしては極めて成功したモデルの一つとされてきた。しかし、収益性と注目度の高さゆえに、無理な演出や体調への配慮不足が続いてきたと指摘する声は少なくない。
また、現在では新たに「るま」「むぎまる」「あずき」といった複数の猫が登場するようになっているが、それも「動画のネタ切れ対策なのでは」「次の“もちまる”を用意しているのでは」といった疑念の目で見られることもある。
■ 動物福祉とは何か──視聴者に求められる“消費者責任”
もちまるの健康問題をめぐる一連の炎上は、単に「YouTuberがやりすぎた」では片付けられない。視聴者の「可愛いから見たい」「応援したい」という気持ちが、知らず知らずのうちに動物の“消費”を助長していた可能性があるからだ。
動画が“癒し”であることは否定しない。しかしその裏で、弱った動物がネタにされ、収益の道具として使われている現実があるなら、それは動物福祉の観点から明確な問題であり、虐待と紙一重ともいえる。
■ 今後の注目点
もちまるの体調は依然として不安定で、今後の動画再開時にどのような説明と方針が示されるかが注目される。同時に、再び元気な姿を見せたとしても、「演出に使われていないか」「健康を最優先しているか」という視点での監視と議論は続くことになるだろう。
もちまるが無事に回復することを祈ると同時に、動物と向き合うすべての飼い主・コンテンツ制作者にとって、今回の件が教訓となることが望まれる
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